すごく昔、まだ僕が小学生だった頃、
本命の子からもらったチョコをずっと冷蔵庫に入れていた。
そのチョコは永久に冷蔵庫の中で眠り続ける筈だった。
しかし、ある暑い夏の日、
そいつはいなくなった。
僕は愕然とした。
ちょっと焦って探した。
すると、そいつは見るも無残な姿で
ゴミ箱から僕を見上げていた。
彼は言った。
「へへっ…食われちまったぜ…。
 まぁチョコだし、仕方ないよな…」
ゴミ箱から彼を抱きかかえた。
悲しみに押しつぶされそうな心を繕い、笑顔で彼に別れを告げる。
「俺が食ってやりたかった…。成仏しろよ…」
心で泣いていた。
別れがこんなにも急に訪れるとは思わなかった。
人生は、いつも突然だ。
今にも涙があふれそうな僕を見て、
彼はやさしく慰めるかのように最後の言葉を残し
この世を去った。
 
「今度からは…貰った日に食えよ…。」
 
 
 
 
その翌年から僕は、貰ったチョコは必ず14日に食べるようになった。
あの日のチョコの匂いを、僕は一生忘れない。